私は冷え性だ。手足がずっと冷たい。夏も冷たい。今くらいの寒い季節になると更に冷たい。冷たすぎて、家の中にいるのに痛くなってくる。エアコンで部屋を暖めても、ストーブで部屋を暖めても、暖かい空気は上にモヤモヤと浮かんでしまって、ちっとも足を暖かくしてくれない。だから冬になると、湯たんぽを出す。
「おかん、湯たんぽどこに出したん」
「あんたの隣りにあるやん、ひだり」
「あ、あったわ。お湯は?」
「ポットで沸かしなよ」
「うい」
空っぽのポットに水を入れてく。コンセントを挿して、お湯になるまで少し待つ。以前話題になっていたバーフバリをテレビで見てた。木をバネに空高く飛んで城内に乗り込むシーンだ。100メートルは飛んでると思う。所々ファンタジーにぶっ飛んだ展開が起こる。だけどそれが面白くて癖になる。バーフバリ!バーフバリ!
湯たんぽ作ろうとしてたのを、すっかり忘れていた。言えよ、おかん。
おかんはヨギボーのソファを買うか悩んでる。悩んでるというよりは、私に買ってとおねだりしてる状態だ。長年リビングに鎮座していたマッサージチェアを遂に粗大ゴミとして捨てたのだ。その場所に次は、人をダメにするソファを買おうというわけだ。この間お店で試しにとオカンがソファに座ったら、そのまま飲み込まれて立てなくなった。私が引っ張ってやっと立てたけど、家に一人で座ったら、ホントに立てなくなるだろうと思う。
ポットからお湯を入れようと思ったら、注ぎ口に湯たんぽの口を合わすことが出来ない。湯たんぽの口がもっと端にあれば良かったのに、真ん中にあるせいで届かない。
「あかん。届かんわ」
「何が貸してみ。出来るわ」
そんなこと言って試すけど、俺と同じことやってるだけだ。届くわけがない。
「ほんまや、届かん。あっはっはっは」
おかしくなったか一人笑い出した。俺も釣られて笑った。結局ポットで湧いたお湯をやかんに移してから湯たんぽに注いだ。
湯たんぽは暖かい。それでも足を触ると冷たい。なのに体は不思議とポカポカしてくる。足に流れる血が、少しだけ暖められるんだと思う。面白い。